源泉かけ流しの見分け方と温泉法の基準
この記事の要点
- 「源泉かけ流し」に法的な定義はない。温泉法が定めているのは「温泉」と「療養泉」の基準までで、かけ流し表示は各施設の自主的なもの
- 公的に決まっているのは掲示義務のほう。加水・加温・循環ろ過・消毒の4項目は温泉法で掲示が義務づけられており、これが唯一の共通の判断材料になる
- 泉質名は療養泉の分類。鉱泉分析法指針にもとづく分類で、掲示されている泉質名から成分の傾向が分かる
「源泉かけ流し」は誰が決めているのか
温泉宿を探していると「源泉かけ流し」という表示を頻繁に見かけます。ところがこの言葉には、法律や公的機関による統一された定義がありません。
温泉法および環境省の鉱泉分析法指針が定めているのは、次の2つまでです。
- どういう水を「温泉」と呼べるか
- そのうちどれを「療養泉」とし、どう泉質を分類するか
「かけ流し」「源泉100%」「天然温泉」といった表示は、この枠組みの外にあります。業界慣行や各施設の判断で使われているため、同じ「源泉かけ流し」でも、加水しているかどうか、加温しているかどうかが宿によって違います。
この前提を知らないまま表示だけで選ぶと、期待と実際がずれます。以下では、公的に定められている部分と、そうでない部分を分けて整理します。
温泉法が定めている「温泉」の条件
温泉法第二条別表では、温泉を次のいずれかを満たすものと定めています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 温度 | 源泉から採取するときの温度が摂氏25度以上 |
| 成分 | 別表に定める物質のいずれかを規定量以上含む |
どちらか一方を満たせばよいのが要点です。25度に満たない冷鉱泉でも、成分の条件を満たせば温泉法上の温泉になります。逆に、成分がほとんど含まれていなくても25度以上あれば温泉です。
「天然温泉」という表示は、この温泉法の基準を満たしているという意味であって、湧き出たままの湯が浴槽に注がれていることを意味しません。
療養泉の分類と掲示されている泉質名
温泉のうち、治療目的に使えるとされる基準を満たしたものを療養泉といいます。浴場に掲示されている「ナトリウム-塩化物泉」といった泉質名は、この療養泉の分類にもとづきます。
療養泉になる条件は、源泉採取時の温度が25度以上であるか、指定された物質のいずれかが限界値以上であることです。指定物質には総鉄20mg、総硫黄2mg、ラドン111Bqなどがあります。
分類は次のように整理されています。
| 区分 | 泉質 | 条件 |
|---|---|---|
| 単純温泉 | 単純温泉 | 溶存物質1g/kg未満かつ泉温25度以上 |
| 塩類泉 | 塩化物泉 | 溶存物質1g/kg以上で、陰イオンの主成分が塩化物イオン |
| 塩類泉 | 炭酸水素塩泉 | 溶存物質1g/kg以上で、陰イオンの主成分が炭酸水素イオン |
| 塩類泉 | 硫酸塩泉 | 溶存物質1g/kg以上で、陰イオンの主成分が硫酸イオン |
| 特殊成分を含む療養泉 | 二酸化炭素泉 | 遊離二酸化炭素1,000mg/kg以上 |
| 特殊成分を含む療養泉 | 含鉄泉 | 総鉄20mg/kg以上 |
| 特殊成分を含む療養泉 | 酸性泉 | 水素イオン1mg/kg以上 |
| 特殊成分を含む療養泉 | 含よう素泉 | よう化物イオンが規定量以上 |
| 特殊成分を含む療養泉 | 硫黄泉 | 総硫黄2mg/kg以上 |
| 特殊成分を含む療養泉 | 放射能泉 | ラドン111Bq/kg以上 |
泉質名は成分の傾向を示すものであり、効能を保証するものではありません。掲示される「適応症」も、泉質ごとの一般的な傾向として定められたもので、個人への効果を約束するものではない点に注意してください。
唯一の共通の判断材料は「掲示義務のある4項目」
かけ流し表示に統一基準がない一方で、温泉法は次の4項目について掲示を義務づけています。ここが宿を比べるときの共通のものさしになります。
| 掲示項目 | 何が分かるか |
|---|---|
| 加水 | 温度や湯量の調整のために水を足しているか。足していれば成分は薄まる |
| 加温 | 源泉温度が低い場合に温めているか |
| 循環ろ過装置の使用 | 浴槽の湯を再利用しているか |
| 消毒 | 塩素系薬剤などを使っているか |
「湧き出たままに近い湯」を求めるなら、この4項目がすべて「なし」に近い宿を探すことになります。ただし、循環ろ過と消毒はレジオネラ属菌対策として衛生管理上の意味を持つ処理です。「消毒あり=質が低い」ではありません。
多くの宿は、この掲示内容を公式サイトの温泉ページにも載せています。予約サイトの説明文ではなく、宿の公式ページを確認してください。
予約前に確認する項目
- 宿の公式サイトに温泉分析書の内容が掲載されているか
- 加水・加温・循環ろ過・消毒の4項目の記載を確認したか
- 分析書に測定年月日が記載されているか(古い分析書のままの場合がある)
- 掲示されている泉質名を確認したか
- 複数の浴槽がある場合、浴槽ごとに湯の扱いが違わないか確認したか
- 「源泉かけ流し」表示がある場合、加水・加温の有無まで書かれているか
- 記載が見つからない場合、予約前に宿へ問い合わせたか
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出典
- 温泉法(昭和23年法律第125号)第二条別表 — 温泉の定義
- 環境省自然環境局「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」 — 療養泉の定義と泉質分類、基準値
- 環境省「温泉の保護と利用」— 温泉利用施設における掲示義務
2026年8月時点で確認した内容です。泉質の判定や適応症の表示は各施設の温泉分析書にもとづきます。健康上の目的で温泉を利用する場合は、事前に医師へご相談ください。
よくある質問
源泉かけ流しに法律上の定義はありますか
ありません。温泉法と鉱泉分析法指針が定めているのは「温泉」と「療養泉」の基準までで、「源泉かけ流し」は業界や各施設が自主的に使っている表示です。統一基準がないため、同じ表示でも加水や加温の有無が宿によって違います。判断材料になるのは、温泉法で掲示が義務づけられている加水・加温・循環ろ過・消毒の4項目の表示です。
温泉法でいう「温泉」の条件は何ですか
源泉から採取するときの温度が摂氏25度以上であるか、または温泉法別表に定められた成分のいずれかを規定量以上含むかのどちらかを満たすものです。どちらか一方でよいため、25度未満でも成分を満たせば温泉になります。
療養泉と温泉は同じものですか
違います。療養泉は温泉のうち、治療目的に使えるとされる基準を満たしたものを指します。温度25度以上か、指定された物質(総鉄20mg、総硫黄2mg、ラドン111Bqなど)のいずれかが限界値以上であることが条件です。掲示されている泉質名は、この療養泉の分類にもとづきます。
循環式の温泉は避けたほうがいいですか
目的によります。循環ろ過と塩素消毒はレジオネラ属菌対策として衛生管理上の意味があり、避けるべきものではありません。湧き出た状態に近い湯に入りたいという目的であれば、加水・加温・循環の表示を確認して選ぶことになります。
宿のページで何を見れば判断できますか
温泉分析書の掲示内容です。温泉法により、加水・加温・循環ろ過装置の使用・消毒の4項目は浴場での掲示が義務づけられています。多くの宿はこれを公式サイトにも載せているため、分析書の写真や記載を探してください。見つからない場合は予約前に問い合わせるのが確実です。
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